脳の血管が詰まり、組織が壊死する脳梗塞
私たちが日常生活において脳血管障害である「脳卒中」という単語を使用する場合、細かく分類すると脳の血管が破れて出血を起こす「脳内出血」、脳の表面の血管が破れる「くも膜下出血」、脳の動脈に血栓が詰まって、そこから先の組織が壊死に至る「脳梗塞」の3つを示しています。
脳の動脈が脆くなってやがて破裂して出血する脳出血は、高血圧の患者さんに多く見られ、かつては「脳溢血」と呼ばれており、脳血管障害の大半を占めている時代もありまあしたが、今日では脳梗塞が全体の半分を占めるに至っています。
脳梗塞には、脳の血管にできた血栓が血管を詰まらせる「脳血栓」、心臓や大動脈など脳以外の場所にできた血栓が血流に乗って脳に移動し、脳血管を詰まらせる「脳塞栓」の2つのタイプがあります。
脳梗塞の危険因子として最も重要なのは高血圧です。血圧の高い状態が続くと脳の動脈硬化が進行し、特に血管の細い場所は梗塞が起こりやすくなります。また、脂質異常症も動脈硬化を引き起こし、血栓を作りやすくするため、中性脂肪やLDLコレステロールの数値が高い方、HDLコレステロールの数値が低い方も要注意です。
急性期の治療法の進歩によって、脳梗塞を起こしてそのまま死亡するケースは少なくなりましたが、後遺症(運動機能、精神機能、知的能力の低下)が深刻になることが多く高齢者にとっては寝たきりの大きな要因となっています。
頭痛やめまい、一時的な麻痺などの症状があれば医師の診察を受ける
脳梗塞の発作は日中よりも夜間の就寝時に起こりやすいのが特徴です。脳血栓は血管が段々と詰まっていくため、数日かけてゆっくりと発作症状(手足の軽い麻痺、言語のもつれ、吐き気など)が現れてきます。最終的には意識を失うこともありますが、前触れに頭痛やめまいなどが起こりやすくなっています。
これに対して脳塞栓は、片麻痺や言語障害、意識障害などが前触れもなく突然やってきます。脳血栓は日常生活の注意で最初の小さな発作を見逃さないようにすることが大切です。高血圧、脂質異常小、喫煙習慣などの危険因子が複数ある人は、定期的に人間ドックや脳ドックを受診するのもよいでしょう。
脳血管に一時的に血栓が詰まって、片麻痺や痺れ、視野の半分が欠ける、舌がもつれるといった症状が現れて、数分から長くても1日程度で消える「一過性脳虚血発作」というものがあります。発作が短期間で消えるのは、血管に詰まった血栓が溶けて血流が元に戻るためです。
しかし、この一過性脳虚血発作を何回か繰り返している人は、数ヶ月以内に本格的な脳梗塞の発作に襲われやすいことが分かっています。したがって、発作の時間がどんなに短くても、脳梗塞の前触れ症状として認識し、医師の診察を受けるようにしましょう。